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ファンタシースターオンライン
『銀の光』

第7話 『なんでこんな時に』


破壊された軍の兵器類からケイが抽出したデータに含まれていたマップを頼りに一同は第1エリアを越え第2エリアを進んでいた。
時折襲い来る敵もナツキ以外の7人の力で排除してきている。
なぜナツキ以外かと言うと、第一エリアで『炎と氷のミラージュ』の後の彼女の体調を気にしてのものだった。
ナツキは最前線に立とうとするがハルカがそれを引き留め、さらにレッドから無理矢理ファイナルインパクトを奪い取ると彼女に押しつけ後方援護に徹するようさせているからだ。
そのハルカの判断にナツキ以外賛成している。
事実、彼女の腕なら仲間に当てずに仲間に当てずに乱射することも可能なので後方援護と言うのはある意味正しい選択だろう。
だが、もともと剣での戦いを得意とする彼女に後方援護は我慢が出来なくなり、時々前に出ようとする。
そしてその度にハルカに睨まれすごすごと元の位置に戻る事を繰り返している状態だ。
ナツキにしてみたら相当ストレスも溜まっているはずなのだが今のところは素直に従っている。
そんな彼女にソラが何気なく小声で理由を聞くと「好きな人の怒る顔と泣き顔は見たくないでしょ」と小声で答えた。
「え、好きって同性で……ですか?」
「何、真剣に取ってるの?」
ナツキはそう笑いながら言い、一方的に話を打ち切った。

「メッセージカプセルがあったよ!」
先行するレンが大声でみんなを呼ぶ。
全員がそこに集まりメッセージカプセルを再生する。
そのから流れる声がリコの物だと言うことは、このラグオル中に残されたメッセージを聞いたことのある者ならすぐに分かることだろう。


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あたしは 今、古代の宇宙船の中にいる。

しかも これは、どうやらただの宇宙船じゃないらしい。

棺だ。

何者かを封じ込めて、この惑星に 宇宙船ごと埋め込んだのだ。

でも、そんなことをしなきゃいけない存在って 何?

とにかく とんでもない化け物がこの奥に眠ってる、きっと。

あたしらは、その禁断の扉を開いてしまったのだ。
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「宇宙船……化け物……」
ナツキが小さくつぶやく。
彼女はジッと何かを考えているようだ。
その近くでソラは震える身体を抱きしめなんとか止めようとしている。
「宇宙船ってここのことなの。化け物って何?」
そんなソラの疑問に答えることの出来る物は誰もいなかった。
永遠とも思える重い沈黙の中でナツキは静かに独白のように口を開く。
「坑道まで発見し聞いたリコのメッセージは全て事実だった。だから信じるしかない。このメッセージで分かることは、ここは宇宙船でパイオニア1の人々は開けてはいけないパンドラの箱を開けてしまった。そして私達も……」
ナツキはスッと立ち上がると全員の顔を見回す。
誰もが不安と恐怖で押しつぶされそうな表情だ。
しかしナツキは感情を殺し、追い打ちをかけるように質問をする。
「みんなの意見が聞きたい。このまま先を進むか、それともパイオニア2に引き返すか」
その問いに誰も答えない。いや答えることが出来なかった。
自分たちの双肩にパイオニア2の全ての人々の運命がかかっているも同然なのだから。
ここで引き返すことも出来るだろう。
だがそれはパイオニア2が宇宙の迷い子になることになるかもしれない。
しかし先に進むことは死ぬかも知れない。
そんな重い空気の中でハルカは口を開いた。
「パンドラの箱に最後に残った物は『希望』。だから私はこの先に『希望』はあると思う。パイオニア2の人々の『希望』が私達なら、私達はその『希望』を見つけるべきだよ。それが私達が今ここにいる理由だと思うの」
ハルカは優しい微笑みをみんなに向けながら語る。
彼女の言葉が終わり、再び沈黙が支配する。
ナツキとハルカが引き返し決定かなと思ったとき、レンが手を挙げた。
そしてその場に似つかわしくない明るい調子で言う。
「あたしは行きますよ。それに興味があるじゃないですか。今までの化け物以上にとんでもない化け物って奴に」
その言葉にレッドも続く。
「確かに、化け物以上の化け物と言うのも老後の話のネタに見ておいた方がいいよな……最悪でもお二人のミラージュもあるし、俺も行きます」
レッドの後ろからやれやれと言った調子でフユが前に出る。
「レッドが行くんじゃ、ボクも行かないわけにはいきませんね。ボクがいないと何をしでかすか分かりませんからね」
「お、お前なぁ」
「何か反論がありますか?」
「うっ……」
フユにやりこめられてレッドは言葉を詰まらせる。
そんな2人の様子に無表情だと思われたケイがフフフと小さく笑う。
「この2人は本当に面白い。総督に呼び出されてからずっと真面目だったがようやく本調子に戻ったようね」
「ケ、ケイまで……」
「ナツキ、私も行く」
ケイはレッドの苦情を無視してナツキに自分の意志を伝える。
「真面目な方かと思ったがレッド殿はずいぶんと面白い方でござるな」
ゼロが感心するようにレッドに話しかける。
「いや、これは……」
「いやはや、気になさらず。無理は身体に毒でござるよ」
「だから、そう言うわけでは……」
「まぁまぁ」
ゼロはレッドの肩を叩きなだめるとナツキを見る。
「拙者は姫の行くところ何処へでも行くでござるよ」
「そんなこと言って、本当はレンの方が心配なんでしょ」
ゼロの横からソラが顔を出す。
「な、何を!?」
「そ、そうよ。なんでそこであたしが出てくるの!!」
「まぁまぁお二人とも」
「「まぁまぁじゃない(でござる)!!」」
声がぴったりと合う2人にソラはクスクスと笑い、ゼロとレンは互いに顔を見合わした後、ばつが悪そうに反対側を向き合う。
そんな2人の様子にさらに声を出して思いっきり笑うと、真面目な顔でナツキを見る。
「ナツキさん、私ももちろん行きますからね」
その言葉にナツキは静かに頷くと6人の顔を見る。
6人ともいい顔をしていると思った。
そして一言元気よく言う。
「さぁ行こうか!」
「「「「「「おうっ!」」」」」」
そのかけ声と共に歩き始める。
ナツキとハルカが最後尾を歩く。
「ナツキ……私、酷いよね」
ハルカのナツキにしか聞こえない小さい声に、ナツキもまたハルカにだけ聞こえるように小さい声で言う。
「ありがとう。ハルカが居なかったら私はみんなを説得する事なんて出来なかった。死地に赴かせるなんて……」
「死地じゃない『希望』でしょ」
「……そうだね。任務を終えて全員でパイオニア2に帰ろうね」
「うん。だからナツキも『希望』を捨てないで……」
そのハルカの言葉にナツキは何も答えることは出来なかった。



「でもこうして見るとここが宇宙船だと言うのも何となく納得出来るね」
先頭を歩くレンが辺りを見回して感想を言う。
彼女の言う通り、第1エリアと違いこの第2エリアの壁や床は金属質の物で作られている。
時折、低い金属音も聞こえてくる。
それらが彼女たちを不安にさせるが、ソラやレン、レッドやフユと言ったムードメーカー達のお陰でなんとか振り切っているようだ。

しばらく歩くと広く長い場所に出た。
「通称『大聖堂』と呼ばれる場所です。第3エリアへの道はこの向こう側へ5ブロックほど行ったところです」
ケイがデータを確認する。
「つまりもうすぐって事ね」
「それではさっさと行くとしましょう」
レンとソラが一歩前に出ると、一番後ろにいたナツキが2人を止めるように前へ出る。
「進んじゃダメ!」
「ナツキさん?」
ソラの問いにナツキは振り向くことなく、まっすぐ部屋の反対側を見る。
「こんな所でまた会うなんて……」
ナツキの小声で吐き捨てるように言う。
その視線の先にいる者……それは巨大な赤い鎌を持った長身のヒューキャスト。
先日ナツキと洞窟で戦ったあいつであった。
その姿にもう1人−レッドが驚きの声を上げる。
「あいつはキリーク……どうしてこんな所に……」
「レッド、知ってるの?」
「ええ、以前ヘタレハンターを助けに行ったときにパーティーを組んだことが……」
「そう……」
ナツキはレッドから視線を外しキリークを見る。
キリークはゆっくりと近づき、互いの間合いの外側で足を止める。
2人の視線が絡みあい、
「探したぞ……我が好敵手……」
「私には関係ない話だね」
「貴様と戦うことでオレは生きていられる……お前を殺す!」
キリークは鎌を振り上げると一気に間合いを詰め斬りかかって来る。
「ワンパターンだね」
ナツキは右肩のアーマーから左手でセイバーを抜くと銀の刃で鎌を受け止める。
そして右手で左肩のアーマーからダブルセイバーを抜くと同時にキリークの身体を狙う。
キリークは後ろに下がり、ダブルセイバーの銀の刃は空を切った。
「ここは私に任せて先に行って」
ナツキはキリークから目を逸らすことなくそう言うと、ハルカ達はすぐに反論をする。
「だけどナツキ!!」
「こいつの目的は私なんだ。ハルカ……大丈夫だよ。すぐに行く」
その言葉にハルカは唇を噛み締め俯くと、パッと顔を上げみんなを促し先に進むことにした。
ソラやレン、ゼロはハルカの決断に反論を唱えるが、「ナツキのことを信じてあげて」と言うハルカの言葉に渋々従う。
彼らがナツキとキリークの脇を通って反対側の扉から向こう側に行くまでの間、ジッと対峙したまま動きはない。
反対側の扉が閉まるのを確認してナツキは口を開いた。
「よくもまぁ簡単に通してくれたものよね」
「オマエヲ……コロス……オマ……エヲ……クラ……ウ……」
キリークの突然の変化にナツキは眉をしかめる。
「オマエヲ……ウガアァァァァァ!!」
ナツキの疑問が晴れることはなく鎌の乱撃が襲いかかってくる。
その攻撃を全て銀の刃で受け流し、間合いを詰めダブルセイバーの下の刃で切り上げる。
しかしキリークはその攻撃を上へ飛ぶことで逃れ、そのまま鎌を上空から振り下ろす。
ナツキは斜め後方へと飛ぶと同時に鎌の先端が床に接触、と同時に床にクレーター上の穴が空いた。

”ドガァーーーーンッ!!!”

その衝撃波はナツキをも襲い、後方へと吹き飛ばされる。
キリークはその隙を逃すことなく、鎌を構え直し間合いを詰める。
ナツキは壁に激突する瞬間体勢を立て直し、壁を蹴りキリークへと迫る。
ナツキの三本の銀の刃とキリークの鎌の攻防。
キリークが鎌を振り下ろせば、ナツキは銀の刃で弾き、ナツキが銀の刃で斬り上げればキリークが弾く。
激しい衝突の後、ナツキの二本の銀の刃を交差させ鎌の動きを止めた。
上から押さえ切り裂こうとするキリーク。
下からそれを受け弾き上げようとするナツキ。
動から静へと戦いが移る。
「こんなことに意味があると思ってるの?!」
「コロ……す……クラ……う……」
ナツキの問いにキリークはそれを繰り返すだけだった。
そしてナツキは見た。
キリークの身体を紫色の何かが取り巻いていることを。
それは遺跡で見た生命体と同じものだということを。
「あんた、まさか奴らに取り憑かれてるの? どうすればいいの……」
ナツキの問いに答える者はいない。
しかしこのままでは確実に体力を消耗してしまう。
その時ナツキの耳に懐かしい声が聞こえた。
『奴を楽にしてやれ』
「その声……まさか……」
『それともお前はこいつがこのまま永遠の牢獄に囚われたままでも良いというのか!』
「でも私は……」
『分かっているさ。お前は誰も殺さない。殺すのは俺だ!』
直後、ナツキの胸のエンブレムが黒い光を発しダブルセイバーの下に伸びる銀の刃が黒曜石の輝きを放つ黒に変わる。
「リューク……分かった……分かったよ……うわああああああ!!!」
ナツキは一瞬だけ力を抜き身を屈めると、上から鎌を押しつけていたキリークの体勢が崩れた。
その瞬間、懐に飛び込むと黒い刃をキリークのエンブレムに突き立て背中まで貫通させた。
エンブレムの奥にあるもの……それは全てのアンドロイドに共通してあるメイン動力部。
いわばアンドロイドの心臓とも言えるものである。
「ア……ガ…ァ……」
キリークは小さく呻くと鎌を落とす。
そしてナツキが刃を消すと、解放された身体はふらふらと後ろに数歩歩くとそのまま背中から倒れた。
「コレ……デ……ネム……レ……」
キリークはその言葉を最後に永遠の眠りにつく。
ナツキはキリークの姿から目を逸らすと、胸のエンブレムを見た。
だが黒い光はすでに消滅している。
「幻聴? それとも幻覚? 兄さん、姉さん。この武器は一体なんなの?」
刃を消した二本の柄を見つめ小さくつぶやくナツキの問いに答える者はここにはいない。
しばしそのままジッとしていたが顔を上げ、二本の柄を両肩のアーマーに収納するとハルカ達の後を追った。
迷いは晴れない。疑問は解けない。それでも先に進まなければいけない。
ナツキは全てを振り切り走る。
だが『大聖堂』を出たところでナツキの視覚が歪んだ。
「!?」
突然のことにバランスを崩し倒れそうになる。
しかし反射的に壁に手をつき身体を支える。
だが、目の前が次第に暗くなっていくのが分かる。
身体の感覚がおかしくなっているのが分かる。
「まさか……さっきの戦いの影響? なんでこんな時に……………」
その目から紫の光が消えていく。



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<あとがき>
恵理「え、え、え、え?」
絵夢「まぁよくあることで」
恵理「この先どうなっちゃうの?」
絵夢「つづき〜」
恵理「え〜〜」

絵夢「と言うことで続きをお楽しみに、まったね〜」