NOVEL



ファンタシースターオンライン
『未来へのプロローグ』

第一話 「なんで?」


パイオニア2の一角にあるハンターズ居住区の一室。
入り口には「NATSUKI.S」と書かれている。
部屋全体が白に統一されていて、女性の部屋らしく清楚なイメージを醸し出していた。
そして部屋の主人はと言うと、頭から布団かぶり丸くなっている。
その原因は先ほどから部屋に鳴り響く電話の音。
夜明け前からうるさいほど鳴り続ける電話を無視するために、部屋の主人は布団に潜り込んでいたのだが……。
「だ〜〜〜うるさい!!」
布団を蹴り上げ起きる。
「一体何なのよぉ!!」
不満を爆発させながら、彼女はベッドから立ち上がると電話のある壁まで歩いていく。

彼女は女性型アンドロイドのレンジャーでレイキャシールと呼ばれる種族だ。
アンドロイドなので本当なら布団は不必要なはずだが、何故か彼女は寝るときは布団を愛用している。
そこに何かしらのこだわりがあるようだ。
さらにアンドロイドは人工皮膚を禁止されているので表情に乏しいと言われているが、彼女のその表情は不思議なほど豊かであった。

「う〜〜誰?」
電話のモニターに映し出された少女を見ながらナツキは言う。
明らかに不機嫌だと言うのが一目瞭然であろう。
『誰って事はないでしょ』
「じゃ、ソラ……何の用?」
座った目でじっと見るナツキにソラと呼ばれた少女は冷や汗を流していた。
ソラはフォースの女性でフォマールと呼ばれている。
『えっと、実は一緒にラグオルに降りて欲しいなぁって思って』
「なんで?」
『ギルドの依頼で降りることになったんだけど……』
「……で?」
『ナツキさんも一緒に来てくれたら心強いなぁって』
「……やだ」
ナツキはそう言うと電話を切ろうとした。
『え〜〜困るぅ。お願いだから一緒に行こうよぉぉ!!』
ソラは必死になってモニター越しに訴えかける。
「あんたが受けた依頼でしょ。だったら一人で遂行したら」
『そんな冷たいこと言わないで、パートナーじゃない』
「いつパートナーになった?」
『出会ったときから……』
「……じゃ、頑張って」
『うわ〜〜ナツキさん、お願いだから切らないで〜〜〜』
モニターの向こうでは涙目になって(と言うかもう泣いてる)ソラの姿に溜め息をついた。
「分かった。今、何処にいるの?」
『部屋の前』
「あんたねぇ……近所迷惑考えた事ある?」
『ううう……』
また泣きそうになってる。
「まぁ良いわ。鍵開けるから中に入っておいで」
『は〜〜い』
ソラはさっきまでの涙は嘘のように笑顔で答える。
そんな彼女にナツキはただただ呆れるしか無かった。

「で、依頼ってなんなの?」
ナツキはクロゼットから腕の防具やスカートなどを取り出し装着しながら聞いた。
ソラは椅子に腰掛けお茶を飲みながらナツキの質問に答える。
「ラグオルに逃げた指名手配の凶悪犯人の逮捕」
「それって軍とかの仕事じゃないの?」
腰にリボンを付け、髪飾りを付けるとソラの向かい座る。
「そうなんだけど、依頼料がすっごくよくて」
その言葉にナツキはピンと来るものがありジッとソラの顔を見た。
「……あんたまた変なもの買ったんでしょ」
「う……変なものじゃないもん……すっごく可愛い水晶玉だもん」
「『可愛い水晶玉』ってなんなのよ」
「とにかくかわいいの!」
ムキになって言うソラにナツキは深い溜め息をついた。
ソラは可愛い物を集めるのが趣味でそれで良く無駄遣いしていた。
ただその『可愛い物』というのがぬいぐるみ等ではなく、今回のように水晶玉であったり標識であったりと良く分からないものであった。
「ナツキさんってば全然分かってくれない」
「分かれという方が無理な話だって」
「う〜」
ソラは口を尖らせ抗議するがナツキは呆れて物も言えない状況であった。
だがそれが毎度のことなので彼女自身諦めている部分もあった。
「まったく……仕方ないから付き合うよ」
「ほんと!」
「その代わり、六四ね」
「え〜五五にしようよぉ」
「七三でもいいよ。なんなら八二でも……」
「う……六四でお願いします」
ソラは不満そうな顔をしているが、ナツキは見ないふりをした。

「ラグオルに行くならショットは必要だよね。ハンドガンは持っていくとして、後は……」
ナツキは武器コンテナから幾つかチョイスしながら言う。
なんだかんだ良いながらも結構乗り気だったりする。
「ソラ、Wセイバーって持ってたっけ?」
「え、持ってるけど……」
「そっか……んじゃこれは私が持ってくことにしようっと……あとは……」
「ナツキさん……」
「ん?」
ナツキは武器を選びながら答える。
「いつも思うんですが……楽しそうですよね」
「ん……楽しいよ」
ソラの方を見ないで答える。
「そのわりに初めはイヤそうで……」
「そりゃあね……」
”ガチャ”
ハンドガンの銃口をソラに向ける。
「うわうわうわうわ!!!!!」
「冗談」
「う〜〜冗談きついですよ」
ナツキはハンドガンを腰のリボンの中に収納する。
「夜明け前からあんなことされたら機嫌も悪くなるって」
「でもいつもあんな感じのような……」
”ブ〜ン”
Wセイバーのフォトンの刃をソラの首元に付ける。
「あ……ご、ごめんなさい!!」
「別に謝らなくてもいいのに……ちゃんと出るかどうかのテストだし」
そう言うとフォトンの刃を消し、左の二の腕に装着している装甲に収納する。
そして右の二の腕の装甲には普通のセイバーを収納した。
「さてと準備OKっと……どうしたの?」
何故かそこには疲れ切っているソラの姿があった。
「いえ……気にしないでください」
「行く前から疲れて、そんなんじゃ何も出来ないよ」
「ははは……」
ソラの乾いた笑い。
「?」
ナツキはそんなソラに首を傾げた。
その原因が自分にあると言うことは全く分かっていないようだ。
まぁソラに言わせればいつものことらしいが……。
「あ……えっと私も準備OKです」
「そう、では行くとしましょう」
「は〜い」
ソラの元気の無い返事を聞くと、別に気にすることなくナツキは彼女と共に部屋を後にした。



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<あとがき>
絵夢「第一話です」
恵理「主人公の名前もナツキなんですね」
絵夢「このナツキというキャラはゲーム中で使っている1stキャラなんだよね」
恵理「はぁ……」
絵夢「このナツキやその仲間達がこれからどう動いていくかこうご期待というところかな?」
恵理「PSOやってないと全く分からないかも……」
絵夢「やれ」
恵理「え……」
絵夢「これはPSOをやっていると言うことを前提に書いてるから、細かい説明は抜きにしてる」
恵理「つまりやらないと分からないと……」
絵夢「そういうこと」
恵理「え〜〜っと……その内に……」
絵夢「じ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
恵理「あははははは……」
絵夢「ま、いいや。と言うわけでまた次回も」
恵理「見てみてください」
絵夢&恵理「まったね〜」



恵理「ところでプロローグとの繋がりは?」
絵夢「内緒」
恵理「やっぱり」
絵夢「当然」
恵理「う〜」