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ファンタシースターオンライン
『銀の光』

第2話 『これが私の全て!!』


「さてと、すこし下(ラグオル)で遊んでこようかな」
ナツキは背伸びをしながら立ち上がるとそう言う。
「『遊んでこようかな』って相変わらずなんだから」
向かいの席に座るハルカは苦笑を漏らすが、すぐに真剣な表情をした。
「どうしたの?」
「ちょっと気になることがあって、本当はこっちの方を話したかったの」
「つまり、いきなり脱線してた分けね。まぁいいわ、聞きましょうか」
ナツキは再び椅子に座ると、テーブルに肘をついてやや身を乗り出す形でハルカを見る。
そしてハルカも身を乗り出して顔を近づけ話し始めた。
「最近、下の地下……洞窟エリアで不可解な死亡事故が連続して発生しているの」
「不可解?」
「みんな、左肩から右の脇腹にかけてバッサリと斬られているの」
ハルカは傷の様子を自分の身体を指でなぞってナツキに示す。
「私もフォトで見ただけなんだけど、遺体によって首や腕・足が斬り落とされていたり、内蔵がえぐられていたりと様々なんだけど、その袈裟斬りだけは共通しているの」
「つまり誰かが殺しをやっていると言うこと?」
「あくまでも仮定だけどね。 洞窟エリアの生命体には両腕が鎌になっている物もいるからそれらがやったのかも知れないし……。 ただ殺されたハンターズは優秀な人ばかりでレベル的にもオーバー100がほとんどだし……」
「……ねぇハルカ。 ブラックペーパーって知ってる?」
「え、それを何処で聞いたの?」
「ふ〜ん……結構メジャーなんだ。この間、下で成り行きで一緒に行動した人からちょっとね」
「そうなんだ……。 私も詳しくは知らないけど、なんでも非合法組織ということみたいね。以前起きた連続行方不明事件に関しても関与していたって……まさか!?」
「可能性の話。 ハルカ、他には情報はないの?」
「他と言われても、アンドロイドのメモリチップまで破壊されていて情報と呼べる物は……。 復元できた範囲で良ければだけど『黒』と『犬』と言う単語が出てきたわ」
「黒い犬……リューク?」
「リュークは『黒狼』でしょ。そんなこと言ったら彼、怒るわよ」
ハルカはナツキの胸のエンブレムを指差しながら言う。
「大丈夫、大丈夫。私はこういうことを普通に言うことぐらいリュークも知ってるから」
笑いながら言うナツキに、ハルカは苦笑を浮かべるしかなかった。
「まったく……とにかく下に行くときは気をつけてね」
「情報ありがとう。そう言うことが起きているとなると行かないわけにはいかないよね」
ナツキは席を立つと真剣な面持ちでハルカを見る。
「ちょっと行ってくるね」
「気をつけてね」
「分かってる」
そう言葉を交わすとナツキはラグオルへの転送装置へと向かった。


洞窟エリアを進むナツキはショット系の武器を持ってくるのを忘れたことを思い出したが引き返すのも面倒と言うことで、その辺に落ちていたショット系のアームズを拾って使っていた。
ダブルセイバーとセイバーは両肩のアーマーの中、形見のヴァリスタと赤いハンドガンは腰のリボン型収納ラックの中に常に装備しているので武器には困ってはいないのだが無いよりかはあった方が良いと言うことだろう
何と言っても1回の攻撃で5つのターゲットを攻撃できると言うのが気に入っているらしい。
「だって一体一体倒すのって面倒じゃない?」
……だそうです。
そう言うことで出てきて襲ってくる生命体はことごとく倒していく。
「しかし……いつ来てもここはクソ暑い!」
溶岩むき出しで流れているエリアゆえにナツキは文句をたらたら言っている。
アンドロイドに暑さが分かるのかと聞かれれば分からないと思うのだが、どうやら冷却機能に支障が出るようだ。
「まったく涼しいエリア2からにすれば良かったかな……(ぶつぶつ)」
そうぶつぶつと言うナツキ……大分ストレスが溜まっているようだ。
もし他の誰かと一緒だったら間違いなく八つ当たりをしているに違いないだろう。

文句を言いながらしばらく進むと明かりが全くない真っ暗な部屋に出た。
「溶岩も見えないし少し涼しいから良いけど……こう暗いとセンサー系をフルにしないとまずそう……」
ナツキは小さくつぶやくと、普段は全く使っていない飾り程度にしか思ってない頭部のカチューシャ型のセンサーをフル稼動させる。
カチューシャの両脇がぼうっと淡い光を発すると、目の前に鎌を持ったヒューキャストらしき人の姿を確認できた。
「こんな暗いところでどうしました? 道に迷ったんですか?」
ナツキは警戒心からアームズを握る手に力を込めながら軽い口調で聞く。
「ククククク……」
ヒューキャストはナツキの問いに声を殺したような笑い声を上げる。
そして次の瞬間、鎌を振り上げ斬りかかってきた。
ナツキは咄嗟に後ろに下がるとアームズを3連射する。
だが、3連射15発のフォトン弾を全て避け迫ってくる。
「早い!」
「遅い!」
ナツキとヒューキャストの声が重なる。
そしてナツキは降りかかってきた鎌をアームズの胴体で防いだ。
上から押し続けるヒューキャスト、そして下で押し返そうとするナツキ。
「今までの連続殺人事件はあんたの仕業か!?」
「ククククク……上からお前を消せとの用令を受けた」
「!?」
「安心しろ、魂まで喰らってやる」
そう言うと、一瞬ヒューキャストは鎌を振り上げ直すと勢いよく振り下げた。
ナツキはアームズを手放すと後方へと逃れる。
そしてナツキがいた場所では鎌によって真っ二つに破壊されたアームズだった物が転がっている。
「そんな……あんなに簡単に破壊するなんて……」
「勘が良いようだな。 ウレシイぞ」
「そんなんで喜ばれても嬉しくないよ!」
ナツキは立ち上がると、両肩のアーマーからダブりセイバーとセイバーを抜き払った。
「ククククク……レイキャシールごときが剣でオレに勝てると思っているのか」
「あんたのその笑い、なにかむかつくよ!」
ナツキは神速の動きで一気に間合いを詰め斬りかかる。
その予想以上のスピードに一瞬驚いたもののヒューキャストは剣の間合いの外へバックステップで避ける。
「なるほどお前が『蒼空無心流』とやらの使い手か。だがそんな物はオレには通じん」
鎌の間合いは剣の間合いよりも長い。
そして彼がいる場所は鎌の間合い。
彼はそのままナツキの脳天目掛け鎌を振り下ろす。
だがナツキもさらに前へと進み鎌を避けると、彼の真下からダブルセイバーの下の刃でのど元を切り上げる。
しかし次の瞬間、彼女の腹部に激痛が走りそのまま十数メートル先に吹き飛ばされた。
ナツキは片膝を付きながら蹴られた腹部を押さえながら起きあがる。
その腹部を見ると装甲が裂け中の機械の一部がスパークを起こしているのが見えた。
ヒューキャストの足を見るとその部分にフォトンの刃が出ていることが見える。
おそらくこれがナツキの腹部の装甲を裂いたのだろう。
「ククククク……」
またあの笑い声を出しながら近づいてきた。
ナツキは口元をゆがめながら立ち上がると剣を構える。
(なんであいつはあんなに早く動けるの……リミッターを解除してるとでも言うの?)
ナツキの疑問に答える者はいない。
その代わり彼女を殺そうとする者が目の前にいる。
ヒューキャストはゆっくりと鎌を振り上げると、最初よりもさらに早いスピードで鎌を振り下ろす。
そしてナツキもそれに反応して後ろへと避けようとしたが、腹部のダメージと重なって動きが鈍り左の足首から先が斬り落とされた。
「!!!!」
バランスを崩したナツキはそのまま後ろに仰向けに倒れ、ヒューキャストを見上げる形となった。
(これまでなの!?)
ナツキはこの場から逃れる為の策を講じる。
「死ね!」
「ラフォイエ!」
ヒューキャストが鎌を振り上げた時に、彼の顔を目掛け最上級火炎系テクニックを放つ。
ナツキは生体脳を持つゆえに精神力がある。
ゆえにテクニックの使用が可能なのであった。
「グアァァ!」
彼は後ろに下がりながら鎌を落とすと、顔を押さえて呻く。
だがすぐにまたあの嫌な笑い声に変わる。
「面白い……面白いぞ……」
ヒューキャストは再び鎌を拾い上げると、ナツキに近づいてくる。
「ラフォイエ!!」
足をやられ逃げることの出来ないナツキは再びラフォイエを放つ。
だが、それは鎌の一振りでかき消される。
「さっきは驚いたが、二度は通じん。隠しダネはもう無いのか」
「……くっ」
(もっと他のテクニックを覚えておけば良かった……)
火炎系テクニック以外は使えないナツキは後悔していた。
だがその後悔もこの場では手遅れでもある。
ナツキの考えをよそに事態は最悪の方向へと進んでいく。
目の前に立つヒューキャストは再び鎌を振り上げる。
そして振り下ろされるその時……。

「風破光弾!」

突然どこからともなく聞こえる声と共に横から飛んできた巨大な光の玉がヒューキャストを吹き飛ばし、同時に暗闇の部屋が急に明るくなった。
「俺達の妹を余りいじめないで欲しいな」
それはナツキにとって懐かしい声。
ナツキはその声のした方を見ると、そこには藍色の髪を持つ青年と少女の姿があった。
「兄さん……姉さん……」
「久しぶりだな」
「お久しぶり」
二人はナツキに簡単に挨拶をする。
「俺があいつと遊んでいる間にエアはカナタの治療を頼む」
「オッケ。でも青風もあまり遊ばないようにね」
「分かってる」
青風と呼ばれた青年は長い髪をなびかせ、まだ倒れているヒューキャストに近づいた。
「よぉ、大丈夫か?」
「貴様……何者だ……」
「あいつの剣の師匠だが」
「邪魔をするな」
「そう言うわけにもいかないんでね」
「ふざけろ!」
ヒューキャストは鎌を構え横に払う。
だが青風は身を翻し、鎌の刃の上に立っていた。
「余り頭に血を上らせると、冷静な判断が下せないぜ」
そう言うと、ヒューキャストの頭部に蹴りを入れ吹き飛ばす。
「カナタの治療が終わるまでの間、少し相手をしてやるよ」
青風は右腕を前に出すと、何もない空間からそりのある片刃を剣−日本刀と思わしき刀が出現する。
形としては日本刀に似ているそれを構えることなく右手で持つ。
ヒューキャストは怒りに肩を震わせながら鎌を構え対峙する。

斬り落とされた左足を拾ってきたエアは少しだけ向こうの様子を見て治療に集中することにした。
「さて向こうは青風に任せて、その間に治さないとね」
「姉さん、いつの間に……」
「患者は黙ってる」
エアは左足の断面に斬り落とされた足をくっつけ、しばらく両手で包み込むと手を離した。
「足首を動かしてみて」
彼女の言葉に左足を動かしてみるとちゃんと動く。
「驚くのはまだ早いよ。腹部に傷を塞いで、少しパワーアップするからね」
「え!?」
「設備なんか必要ないの。あなたの身体の中にある修復用のナノマシンとすべての機械とシンクロ・コントロールできる私の力があれば簡単なんだから」
エアはニコリと笑うと右手を腹部の裂け目に当てる。
するとみるみるうちに塞がっていく。
ナツキはその信じられない光景にただただ言葉を失うだけだった。
「カナタのあまりの変わりように、私達すごく驚いたんだよ」
ナツキの顔を見ずにエアは独白のように言う。
「でも姿は変わっても中は全然変わっていなくて本当に安心したよ。あ、むしろあの時よりも大人になったかな?」
「姉さん達と別れたのは10歳の時ですよ。大人になりますよ」
ナツキは口を尖らせて抗議する。
「あははは、ごめんね。言われてみればその通りだよね。私達は時間に支配されていないから……」
「?」
「気にしない気にしない。さてこれで完全に壊れた箇所は治ったから次はパワーアップね」
「え?」
「あいつはリミッターを解除した上に暗殺用に徹底的に調整されている。そんなのを相手にするんだからカナタもそれなりにしないとダメだよ」
「でも、それって……」
「まったく、ぐだぐだ言わないでお姉ちゃんに任せておきなさい」
エアはナツキの頭に手を置くと軽く地面に押しつける。
そして中枢を支配して動けないようにした上で、体内のナノマシンを使って改造を始めた。
決して感じる事はないにしてもナツキにしてみたら余りいい気はしない。
だが、エアに逆らうことも出来ず受け入れるしかない。
そして時間にして数分後、「完成」と言うエアの言葉でナツキは拘束(?)から解放された。
ナツキはゆっくりと立ち上がると、腕や足を曲げたり腰をひねったりと身体を動かして確かめる。
「見た目は何も変わってないから安心して」
ニコリと言うエアの言葉にナツキは曖昧な返事をする。
青風と同様に自分がもっとも信頼するエアがしてくれた事なので大丈夫のはずだが、やっぱりどこか疑心暗鬼になってしまう。
エアもナツキの様子からその事はよく分かっているようだが顔に出すことはない。
この辺が見た目は15歳でもナツキよりも遙かに大人のエアならではの余裕というものだろう。
ナツキも精神年齢は40歳を超えているはずなのだが気にしないことにしておく。
エアは向こうでヒューキャストと遊んでいる青風に声をかける。
「せ〜いふ〜〜、こっちはおわったよ〜〜!」
「わかったぁ!」
青風からはこれ以上ないぐらいに余裕の声が返ってきた。
その声を聞いてからエアは再びナツキを見る。
「それじゃ青風とバトンタッチしてくるね」
「あ、姉さん……」
ナツキが言い終わる前にエアは風のようにその場から姿を消し、気づくと青風と場所を変わっていた。

青風とヒューキャストの間の広いスペースのエアがスッと割り込んできた。
「!?」
ヒューキャストはどこからともなく現れたエアに驚き少し後ろに下がる。
「エア、続きは任せた」
「オッケ」
青風は簡単にそう言うと、その場からスッと姿を消し次の瞬間にはナツキの側にいた。
「逃げるのか!!」
そのヒューキャストの叫びにエアは不適な笑みを浮かべる。
「青風は用事があるの。だからその間、私が遊んであげるから拗ねないでね」
その挑発とも取れる言葉にヒューキャストはエアを睨み付けた(と思われる)。
エアは余裕を持って両手を前に出した。
すると、青風と同じように何もない空間から長刀のような武器が出現する。
「青風のジルフェと違って、私のブルーウィンドはあなたと同じ長物。少しは楽しめると思わない?」
ヒューキャストは人を小馬鹿にしたようなエアの話し方(本当に小馬鹿にしているわけだが)に切れて叫び声と共に斬りかかる。
エアは鎌の軌道を瞬時に先読みし長刀で払い上げ、そのまま首を狙って逆に払う。
ヒューキャストは咄嗟に身を後ろにそらして避けるが、そこへエアの足払いが決まり後方へと倒れてしまった。
彼はすぐに次の攻撃を警戒して、すぐの防御態勢に入りつつ立ち上がるが一向に攻撃が来ない。
おかしいと思いエアを見ると5m程離れた場所でのんびりと様子を見ていた。
「貴様……何故とどめを刺しに来ない」
「だって私の役目は時間稼ぎだからね」
怒りに満ちたヒューキャストの質問に、エアは明日は晴れかな?のような軽い口調で答える。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その言葉にさらに怒りの炎を燃やしてヒューキャストはエアに斬りかかっていった。

「改めて、カナタ、久しぶりだな」
「兄さん……」
片手を上げて軽く言う青風にナツキは苦笑を漏らす。
エアの戦いぶりを見ても2人に緊張感という物が感じられないからだ。
「さて、エアのお陰で身体も治ってさらに調子が良くなったようだから、渡す物を渡しておかないとな」
青風はベルトに下げている二本の柄をナツキに手渡した。
「こ……これは!?」
ナツキは両手にそれを持って信じられないといった表情で青風とその二本の柄を見比べる。
それは青風が作った特殊なシステムを組み込んだダブルセイバーとセイバーだった。
「あの時言ったよな。こいつらを使いこなせるようになったら卒業の証としてやるって」
「でも……」
「そいつも形状はダブルセイバーとセイバーだ。使い分には問題ないだろ」
「だけど私は……」
「はっきりしないな。確かに外見はアンドロイドだ。正直初めて見たとき俺もエアもあまりの変貌ぶりに驚いたよ。だってヒューマンがアンドロイドになっているんだからな。だが中身は俺達の知っているカナタ・トラッシュだろ。それ以外の何者でもないと思うが、違うか?」
その真剣な言葉にナツキは「そうです」と答えた。
「よし、いい娘だ」
青風はナツキの頭を撫でる。
ナツキは手で払うことは無いものの、口を尖らせて抗議する。
「やめてくださいよぉ。もう子供じゃないんですから……」
「卒業するまでは子供だよ」
「う〜」
「カナタ、『蒼空無心流』の奥義は?」
「『心』です」
青風の質問のナツキははっきりと答える。
「上等、行ってこい!」
その答えに笑みを零すと青風はナツキの背中を押しながら戦場へと促す。
そしてナツキも「ハイ!」と答え今エアが戦っている場所へと向かった。

「姉さん!」
ヒューキャストと遊んでいるエアにナツキは声をかける。
彼女はその声にナツキの姿を確認すると「準備は整ったみたいね」と小さくつぶやき、ヒューキャストをなるべく遠くへと引き離す。
「それじゃ、主役の準備が整ったみたいだから私はこれまでね」
「主役だと……ふざけるな!」
「怒らない怒らない」
エアは軽くウィンクをすると、瞬時に姿を消し駆け寄ってくるナツキの側に移動する。
突然横に現れたエアに驚くことなくナツキは足を止める。
「あ、姉さん……」
「頑張ってね」
「ハイ!」
その元気な返事を聞きエアは後方にいる青風の元に戻った。
「大丈夫かな?」
「俺達の『妹』だ。心配はいらないさ」
「そうだね」
2人は言葉を交わし、ヒューキャストと対峙するナツキの背中を見た。

「お待たせ」
ナツキはまだ刃を出していない二本の柄をそれぞれ両手で持ち静かに言う。
「死に損ないが……殺されに来たというわけか」
「今度はそう簡単にいかないよ。兄さんと姉さんが見てるんだから」
「何と言おうとも貴様はここで死ぬ!」
ヒューキャストは言い終わらないうちに鎌で上から斬りかかる。
だがナツキはそれを右へ身体を動かし避ける。
その後も激しい連撃が襲ってくるが、ナツキは全て避けた。
(身体が軽い……姉さんのありがとう)
ナツキは心の中で礼を言うと、少し離れた場所に立ち両腕に力を込める。
(私に出すことが出来るの……いえ、迷ってはダメ。10歳で2人の元から旅立って30年あまり……いろんな事があって姿も変わったけど、でも私は私! これが私の全て!!)
ナツキの右目が紫から金色に変わる。
その目に映るは鎌を構え走り近づいてくるヒューキャスト。
ナツキもヒューキャスト目掛け走り始める。
そして衝突。
ナツキはすれ違い様、鎌が振り下ろされる瞬間、左手で逆手に持つ柄から銀の刃が放出し鎌を跳ね上げ、右手に持つダブルセイバーもまた銀色の刃を放出し、ヒューキャストの手首・肘・肩の関節部分を切断をしないまでも破壊した。
そしてその後には鎌を落とし膝を地につけるヒューキャストと、それに背を向け立つ三つの銀色の刃を持つ武器を両手に持つナツキの姿があった。
「馬鹿な……」
ヒューキャストは信じられないと言った声で呻く。
「勝負あったな」
その声に彼は顔を上げると、そこには青風とエアの姿があった。
「貴様……」
「その腕でまだ戦うのか」
「クククククク……」
「?」
「今日の所は引き上げよう。だが貴様らは我がライバルとして付け狙う」
「どうぞご自由に」
「ウワハハハハハ!!」
ヒューキャストは高笑いを残し、テレパイプを出すと何処へと去っていった。
「やれやれ、元気な御仁だな」
青風は苦笑いを浮かべると、両手の銀の剣を見つめるナツキに声をかける。
「兄さん、姉さん……私……」
「良くやったな」
「卒業おめでとう、カナタ」
2人の祝福の言葉にナツキは銀の刃を仕舞い二本の柄を胸に抱き頷く。
「さすがは『銀の閃光』と呼ばれているだけあって、心の色も『銀色』だったな」
「ハイ」
再び頷いて答えるナツキに青風とエアは満足そうな顔をする。
「無事カナタは卒業試験も合格したし、俺達は行くとするか」
「そうね」
突然背を向けどこかへ行こうとする2人にナツキは慌てて声をかけた。
「行くって何処へ……一緒にパイオニア2に戻らないんですか?」
「もともと俺達はパイオニア1にも2にも乗っていないからな」
「そうそう。私達はカナタにそれを渡しに来ただけなの」
「それって……」
ナツキが疑問を口にしようとしたときナツキの周りを突風が吹き抜けた。
彼女は咄嗟に顔を腕でガードし、風が吹き抜けるのを待った。
そして風が止んだとき、2人の姿は何処にもなかった。
「兄さん……姉さん……」
その呟きは誰もいない洞窟の壁に吸い込まれていく……。



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<あとがき>
恵理「……やっぱりこの2人だったのね」
絵夢「何処にでも出てきますが伺か?」
恵理「お〜い」
絵夢「彼らの出番はこれで終わり、あってもあと1回だけなのでご安心を」
恵理「PSOとは全く関係ないからね」
絵夢「うむ」
恵理「でもナツキというかカナタはこの2人に鍛えられていたんじゃ強い訳よね」
絵夢「本当に意味で最強で何でもありだからね、この2人は(w」
恵理「ヒューキャストの人も遊ばれてしまって可哀想に」
絵夢「次があるよ」
恵理「あるの?」
絵夢「さぁ?」
恵理「おい!」

絵夢「と言うわけで次回はまた過去の話になりそうです」
恵理「また停滞?」
絵夢「さぁ?」
恵理「うわ〜(汗」

絵夢「であ次回もどうぞよろしくです」
恵理「みなさんまったね〜〜♪」