NOVEL



ファンタシースターオンライン
『銀の光』

エピローグ


あれから40年が過ぎた。

ダークファルスを倒したことでパイオニア2の人々はすぐにラグオルに降りることが出来ると思われた。
だが、一般市民の上陸許可が降りたのは27年前。
そして居住が許されたのは30年前だった。
その間、総督府とラボと軍とハンターズギルドの間で様々な思惑が飛び交ったのは想像に容易いなことだろう。

今ではパイオニア1の人々が作ったセントラルドームを中心としたエリアは星首都として復興した。

星首都の中央には総督府を中心とする様々な行政ビルが建ち並び、ハンターズギルド総本部もこの区画に存在している。
そしてその一室にソラはいた。
彼女は現在、前任のユーリの後を継いで総合管理室の室長をしている。
つまり40年前、ハルカが座っていた席にソラが座っている。
ソラがこの席に座ることになった時、何か運命めいたものを感じていた。
それは今も変わらないのだろう。

ソラはモニターから目を離し、軽く背伸びをすると立ち上がると、机の上のカップを持って窓際に歩み寄った。
窓の外を見ると、衛星軌道上のパイオニア4より輸送船が郊外の宇宙港に降りていくところが見えた。

パイオニア2の人々がラグオルへの居住許可が下りた頃、本星より移民船パイオニア3がこのラグオルに向けて出航した。
パイオニア3は5年前に到着し、約1年掛かって全ての住民が地上へ降りた。
そして現在衛星軌道上にはパイオニア4が待機しており乗っている人々は順次地上へと降りている。
政府関係者や軍、ラボ、そしてハンターズが優先的に降りているので一般市民が地上に降り始めるのはあと2週間ほど先になりそうだ。
それでもパイオニア3の時に比べてスケジュールはスムーズに進んでいるようだ。

ソラは輸送船を見ながらカップの中のコーヒーに口をつける。
「今日あたりハンターズの子たちが降りてくるかな? 今頃、宇宙港はすごく混雑していそうね」
ソラは今そこで仕事をしている友人を思い出してクスッと笑った。
その時、机の上の通信端末が鳴る。
ソラは「?」を頭に浮かべながら出ると、モニターにはソラにとっても妹的な存在のカエデとエアが姿を見せた。
「どうしたの?」
『ソラさ〜ん、ごめんなさ〜い、今年も行けそうにありませ〜〜ん』
『本当にごめんなさい』
カエデとエアは涙声ながらに言う。
「仕方ないわよ。あなた達の分まで手を合わせておくから気にしないで」
『『ありがとうございます』』
2人は今、星首都とはちょうど反対側に新たに創られた都市のハンターズギルド支部で仕事に追われている。
そしてここ2年はこうしてモニター越しでしか話をしていない状態なのだ。
「2人とも仕事、頑張ってね」
『ハイ、それでは失礼します』
『お元気で〜〜』
2人はソラに挨拶をするとモニターを切った。
ソラは何も映っていないモニターから視線を外して時計を見る。
「さてそろそろ行かないといけないわね」
そう言うと出かける準備を始めた。


「てやっ!!」
「「うわ〜〜!!」」
ハンターズギルド総本部内にある訓練場で新人ハンター2人を相手にレンは訓練用の大剣を振るっていた。
現在、彼女は前線を離れてこうして新人を鍛える教官をしている。
レンは大剣を肩に担いで自分の剣撃に吹き飛ばれ床に転がる若いヒューマーとヒューマールに近づく。
「まったく、あの程度で吹き飛ばされてどうするの? 実剣だったら真っ二つだよ」
「そんなこと言っても先生……」
「問答無用!」
身体を起こし反論しようとするヒューマーに剣先を突きつけて黙らせる。
そしてトーンを落として言葉を続ける。
「実戦で死にたくないでしょ」
「「………」」
短い沈黙の後、入り口の方から声が響いた。
「相変わらず厳しい先生ね」
レンはその声に振り向くとそこにはソラが立っている。
「師匠に比べたらまだまだだと思うよ。少なくともあたしはラフォイエは使わないから」
「それもそうね……」
ソラは思い出しながらレンに近づきニコリと笑いながら言葉を続ける。
「あの人は隙あらばラフォイエをぶつけてきたからね」
「むちゃくちゃだったよね……。そういえばもう時間?」
「まだ少し余裕はあるけど」
「まぁいいわ」
レンは振り向いて後ろに立つ2人を見る。
「2人とも今日はこれでお終い。しっかりと復讐しておくんだよ」
「「はい!!」」
2人は良い返事し、一礼するとシャワールームの方へと走っていった。
「元気な2人ね」
「元気すぎて将来心配だけどね」
「大丈夫、私達と言う前例があるから」
「それもそうか」
ソラの言葉にレンは自分たちの若かりし頃を思い出して納得する。
「それじゃ、行こうか」
「え、シャワーとか浴びて行かなくて良いの?」
「別に汗はかいてないから大丈夫」
「全くあなたって娘は……まぁいいか。それでは行きましょうか」
ソラとレンは訓練所を後にした。

宇宙港に併設されている入星管理局でゼロは手伝いをさせられていた。
ソラやレンと違い今でも現役のハンターズとして活躍している。
だが今日は入星管理局の手伝いをしていた。
「お疲れ様」
交代時間になり背伸びをするゼロに、交代要員の青年がねぎらいの言葉を書ける。
「なかなか単調な作業でござったよ」
「まぁね。本当ならハンターズの人に手伝ってもらう事自体おかしな話なんだけど、何処も人手不足らしくてね」
「いやいや、これも経験の一つでござるよ」
「そう言ってもらうと助かるよ」
「それでは後はよろしく頼み申した」
「おう」
ゼロは礼儀正しく会釈をするとその場を後にした。
そしてそのまま入星管理局を出て宇宙港の敷地を出ると今日入星したハンターズの一行が仮住まいとなるブロックへと案内されている様子が見えた。
「この星の未来を担う若者達か……」
そうつぶやくと思わずは苦笑を漏らす。
「いかんな、拙者もまだまだ現役だというのに。これが老いというものでござろうな」
ゼロは目的日に向け歩きながら新たなハンターズ達を遠くに眺めていた。
その人の列の中に目を引く3人組の姿を見た。
1人は背が高くがっしりとした体躯で黒い甲冑に身を包んだ褐色の肌のヒューマー。
1人は細身で長身、色白の肌、真っ白なロングドレスを着たフォマール。
そしてその間で自分の両腕を両脇の2人の腕に絡めて歩く少女。
少女は先の2人よりも頭一つ分背が低く、黒のノースリーブのミニのワンピースにオーバーニーソックスという服装。
そして何より人目を引く銀色に輝くセミロングの髪をなびかせていた。
姿からではその少女がハンターなのかレンジャーなのかフォースなのか判断は出来ない。
しかしここにいることから少女もハンターズなのだろう。
ゼロは気づくと彼女たちを追いかけ人の列に駆け寄った。
しかし、彼が駆け寄ったときにはすでに3人の姿は人の群れに飲み込まれ見失ってしまった。
「気のせい……? いや、よくよく考えれば銀髪など珍しくもない。拙者もどうかしているでござるな」
ゼロは軽く頭を叩き自分を納得させると、思い出したように時間を確認する。
「もうこんな時間でござるか。急がないとまた何を言われるか分からないでござるな」
そうつぶやくとゼロは目的地へ向け走り始めた。



空が少しずつ赤くなっていこうとする頃、ソラとレンは約束の時間よりも早く目的の場所……星首都を一望できる丘をゆっくりと上まで歩いていた。

そこには40年前死んだナツキとハルカの墓がある。
あの日ソラ達はパイオニア2に戻る前にナツキのエンブレムとハルカの遺体をこの眺めの良い丘に埋めた。
本来ならパイオニア2に運ぶべきだったのかも知れないが、全員一致で埋めることにしたのだ。
そして今日は2人の命日でソラ達はお墓参りの為にここに来た。

丘の一番上まで辿り着き2人のお墓の方を見ると藍色の長い髪を持つ青年と少女が手を合わせていた。
ソラとレンは顔を見合わすと驚かせないようにゆっくりと近づくと、2人は気づいたのかゆっくりと立ち上がりソラ達を見た。

「こちらに眠る方々のお知り合いの方ですか?」
青年は静かな口調でソラとレンに聞く。
「ええ、私達にとってとても大切な人達なんです。あのお2人は……?」
ソラの問いに少女が口を開く。
「私達は今日この星に来たばかりなんです。それで散歩がてら景色の良い場所を探していたらここに辿り着きました」
「あ、それで」
ソラとレンは少女の言葉に納得したようだ。
「ここは良い場所ですね。きっとここに眠るあなた達の大切な2人もずっとこの景色を眺めているんでしょうね」
青年は星首都の向こう側の山に掛かる太陽を眺め言う。
「それではそろそろ我々はお暇しようと思います」
青年と少女は2人の横を通って行く。
「今日はありがとうございました」
ソラは2人にお礼を言う。
その言葉に2人を足を止めソラ達を見る。
「いや、礼を言われることは何もしてませんが……」
「今日は2人の命日なんです。ですからありがとうございました」
「ああ、そういうことですか。と言うことは日の巡りが良かったんですね。これも運命というものなのかも知れない」
「日の巡り……? 運命……?」
青年の言葉にソラは首をかしげる。
「あ、いえ、こちらの話です。それではこれで」
青年と少女は軽く頭を下げると、今ソラ達が歩いてきた道を下りていった。
その後ろ姿を見送るとレンが「いい人達だね」と言う。
「そうだね。身も知らない人のお墓に手を合わせてくれるんだから」
「しかし、ゼロはまだ来ないのかな?」
「入星管理局の手伝いをしてるからまだまだ時間が掛かるんじゃないかな?」
「まったく、こんな日にまで仕事しなくても良いのに」
「まぁまぁ」
腕を組んで頬を膨らますレンをソラがなだめる。
「まぁ良いわ……それよりもレッドさん達から連絡はあった?」
レンは自ら話題を変える。
ソラはクスッと笑うと、質問に答えた。
「先日フォトメールが来て今はガル・ダ・バル島でのんびりしているそうよ」
「あそこで? のんびり出来るわけ?」
「40年前と違って今は安全よ。海底プラントも今じゃ海底水族館だし、地下の廃棄場だって埋められているし……」
「あたしはもう二度とあそこへは行きたくないけどね」
「私だって嫌よ。でも人それぞれという事じゃないかしら?」
「それぞれねぇ……ホント計り知れない人達ね」
「まぁね。そんなわけで来られないそうよ」
「と言うことは今年はあたし達3人という事か……」
「寂しい?」
「ううん、そう言う訳じゃないけどね」
レンは静かに微笑む。
その時、ゼロが声を出して駆け寄ってきた。
その姿を見て、レンは一言「遅い!」と怒鳴る。
「遅いと言われてもまだ時間には……」
「レディを2人も待たせたんだから遅いの!」
「それを言われると……かたじけない。その代わり耳に入れておきたい3人組を見かけたでござる」
ゼロは宇宙港で見かけた3人の事を特徴を始め全てを見たままに話をした。
「で?」
話し終えたゼロにレンは冷たい視線で聞く。
「で?と申されても……」
「その3人が師匠達とでも言う気?」
「いや、そう言うわけでは無いのだが……」
「そう言う訳じゃなくてどういう訳? ここにその3人を連れてきなさいよ」
「それはすぐに見失ってしまい……」
しどろもどろに言うゼロにレンは呆れて大げさに溜め息をつく。
「一度徹底的にばらしてメンテを受けた方が良いよ」
「それは酷いでござる!」
レンとゼロのやりとりを見てソラはクスクスと笑う。
「な〜に、ソラ?」
「相変わらずお尻の下に敷いているなぁって思って」
「なんでそうなるわけ!」
「見たままよ。それよりも私もその3人に興味があるわね。ハンターズは間違いないのよね」
「はい」
「だったらそのうちどこかで会うことになるかも知れないわね」
「なぁに、ソラまでこんな話を信じるわけ?」
「半信半疑。でも本当だったら会ってみたくない?」
「まあね……」
「さぁ。それよりも早いところ手を合わせよう」
ソラはそう言うとさっさとお墓の前に立ち手を合わせる。
「ゼロ、あたしたちも行こう」
「そうでござるな」
ソラに続きレンとゼロもお墓の前に立つと手を合わせた。

それから小1時間ほどその場で話に華を咲かせていると、いつの間にか夕日は沈み次第に暗くなってきた。
「ここから眺める街の明かりはいつ見ても綺麗だね」
レンは腕を組んで言う。
「そうでござるな」
「うん、そうだね……。それじゃそろそろ帰ろうか」
ソラは言葉に2人は頷き、お墓を後にする。
一緒に歩いていたが、ふとソラは足を止めお墓の方を見て「また来ますね」と手を振る。
「ソ〜〜ラ〜〜〜置いてっちゃうよ〜〜〜!」
先を進みソラがいないことに気づいたレンとゼロは振り返りソラを呼んだ。
「あ、待ってよ〜〜!!」
ソラは笑いながら慌てて2人の後を追っていった。


3人が立ち去ったあと、お墓の前に先ほどここで手を合わせていた藍色の髪の青年と少女がどこからともなく姿を見せた。
2人は小さくなっていく3人の後ろ姿を見つめている。
「彼女たち、どういう反応するかな?」
少女がどこか面白そうに言う。
青年はフッと笑うと、明るい調子で答える。
「さぁな。どちらにしても面白そうだけど」
「だけどこれで本当に良かったのかな?」
「『あいつ』の可能性を見せてもらったからその礼だよ。それとも止めた方が良かったか?」
「ううん、私もこっちの方が良かったから問題なし」
少女は青年にニコリと微笑みかけると、青年も少女に微笑み返す。
「それじゃこの世界での仕事も終わったし行こうか」
「うん」
2人の身体がふわりと浮き上がった。
すると少女は丘の下の方を見る。
「バイバイ。私達の可愛い……」
少女が言い終わる前に2人の身体は空へと消えた。



Fin


<あとがき>
絵夢「これで終わりです」
恵理「は〜い、お疲れ様でした〜」
絵夢「これで当面はマタ〜リかな?」
恵理「あは」

恵理「ところでゼロが目撃した3人組ってまさか……」
絵夢「それぞれの想像に任せる。はっきりと書く気も無いし、書かないよ」
恵理「それじゃ勝手に妄想する」
絵夢「はい、ご自由に」
恵理「は〜い」

絵夢「では全三章に渡って書きましたPSO二次小説もこれで終わります」
恵理「最後までお読みくださりありがとうございました」
絵夢「またどこかでお会いしましょう」
恵理「ではみなさん」
絵夢&恵理「まったね〜〜〜♪」













<まとめ>
2001年7月25日に発表した『未来へのプロローグ』から始まり、気づくと足かけ2年に渡り書きました。
自分のキャラを使って何処まで遊べるかを目標にある程度まとめたプロットを元に一気に書き上げたような気もします。
確かに途中何度も中断もしましたが、こうして最後まで書けたことは本当に嬉しいです。

ファンタシースターオンラインとの出会いはDC版の発売より半年ほど前、セガがネット上で行った展示会ででした。
そこで発表された全キャラの中にいたレイキャシールに一目惚れしてそのまま予約しトライアルから参加させて頂きました。
それから2年と半年……長いようであっという間でした。
この間にDC版はVer2が発売され、PC版GC版そして現在私はプレイ中XBOX版と発売されました。
1日数時間しかできませんが、PSOは私にとって生活の一部になってます。

さて物語についてですが、もっと書きたいと思っている部分もあります。
それはリュークのことです。
第2章で出てきて暴れて死んでしまいましたが、実は一番気に入っているキャラでもあります。
そのうち気が向いたらカナタ、ハルカ、リュークの3人の物語も書きたいなぁと思ってます。
それからカエデとエアの影が無い……第3章に至ってはもう消滅してます。
だいぶ可哀想なキャラでした(汗
私の下手さ加減の影響をもろにかぶってしまい、2人を気に入ってくれていた皆さん、ごめんなさいです。
第3章に青風とエアが出てきますが、こいつらって何者?と言う質問もあると思います
彼らの言葉を借りるなら『時間と空間と生命の旅人』となります。
その言葉通り彼らに時間や空間は意味をなしませんし、なんでもありです。
敵と見なせば容赦なく消滅させます。
DFが相手であろうとも敵と認識すれば消滅させていたでしょう。
ですが彼らにとってDFに対して敵という認識はありません。
そしてDFを倒すのは彼ら人類の仕事という認識の元にカナタに心の力=魂の力を武器とするソウルブレードを渡しました。
ただ、2人はそれを持ってしても倒せないと思っていたようです。
実際カナタはDF戦の途中で脳死により機能停止で死にます。
しかしソウルブレードの秘めた力がカナタ、ハルカ、リュークの魂を呼び起こしナツキの身体を使ってDFを倒しました。
青風が最後に言った『あいつ』とはソウルブレードの事です。
自分で創っておきながらいい加減なものですが、これが青風ですから仕方ありません。
この世界での仕事も終わり別の世界に旅立ちましたが、2人はきっとそこでも遊ぶことでしょうね。


最後に……
この作品を書くにあたってキャラクターの使用を許可して頂いた全ての皆さん、ありがとうございました。
そして最後まで読んで頂いた全ての皆さん、ありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう♪