ファンタシースターオンライン
『未来へのプロローグ』
第四話 「返事はいんだけどねぇ……」
ナツキは聞こえてくる声に導かれるように、道無き道を走り続けた。
そして置いて行かれないように走るソラ。
足下まで隠れるスカートの為に走りにくそうだが、それでも必死に付いていっていた。
するとナツキを見失わないよう走るソラの耳にも助けを求める声が聞こえてきた。
「ナツキさん、声が!」
「分かってるから早く!!」
「はい」
しばらく行くと目の前に行く手を塞ぐように倒れている巨木があった。
「え〜〜い、邪魔!!」
ショットを最大出力で何発も撃ち破壊する。
その様子をようやく追いつき、激しく息を切らすソラは唖然と眺めていた。
「行くよ!」
ナツキはそう短く言うと走り始めた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよぉ」
息を整える間もなくソラはナツキの後を追いかけた。
そして5分ほど走ると開けた場所に出た。
そこでは3匹の巨大なエネミー−ヒルデベアに追いかけられている二人のハンターズの少女がいた。
「ナツキさん、あれって!?」
ソラは視認するとナツキを見る。
「分かってる。二人ともこっち!!」
ナツキは大声で逃げまどう二人に声を掛ける。
二人はその声が聞こえたらしく、顔を見合わせこちらに走ってきた。
無論、3匹のヒルデベアも時折炎を吐きながらこちらに向かってくる
ナツキはショットを構え3匹がこちらの射程に入るまでジッと待った。
数瞬後。
「ソラ」
「シフデバ!!」
ナツキの身体が赤と青の光に包まれる。
それを見た二人は攻撃の邪魔にならないように左右に分かれる。
そして……。
「あったれ〜〜〜!!!」
ショット3連撃、計15発のフォトン弾が3匹すべてを貫いた。
一瞬動きを止め、その場に倒れるヒルデベア達。
ナツキはショットを構えたまま、ジッとその様子を見つめ、完全に動かない事を確認すると緊張を解いた。
「カエデ、エア、大丈夫?」
「はい、レスタ〜!」
ナツキは左右でへたり込んでいる二人に笑顔を向け、ソラもまた治療のテクニックを掛けた。
「ナツキさん、ソラさん、ありがとうございます」
カエデと呼ばれた少女がホッとした表情で礼を言う。
「本当に助かりました」
そしてエアと呼ばれた少女もカエデに続いて礼を言った。
カエデはナツキと同じレイキャシール。
エアはフォースの女性ニューマン−フォニュエールだ。
二人とも駆け出しの頃にナツキに助けられて以来ずっと慕い続けている。
「まだレベルが低いのにこんな奥まで来て……」
ナツキは少し溜め息混じりに言う。
「そうそう、気を付けないとね」
ソラもそれに続いた。
「「はい」」
二人の諫められてシュンとする二人。
ちなみにこの時点での4人のハンターレベルは、
ナツキ……143
ソラ…………81
カエデ………26
エア…………25
である。(MAXレベルは200)
「もうカエデがもっと奥に行ってみようって言うからこんな事になったんだよ〜」
エアがカエデに文句を言い始めた。
「そんなこと言ったって、あの動物のデータを取らないと……あ!?」
エアに反論しようとしたカエデが何か思い出したように腰に装着された何か装置を調べた。
「どうしたの?」
「「?」」
エアと共にナツキとソラもカエデをのぞき込んだ。
「良かったぁ……データはちゃんと取れてる」
「やっぱり依頼で来てたんだ」
「ハイ!、原生生物のデータ収集です」
「……なるほど」
ナツキは3人から視線を外すと立ち上がり周囲を見回した。
「ま、この辺は亀とかカマキリがいないからまだ良いかも知れないね」
「「「亀とかカマキリ?」」」
「うん、正確にはそれに似た原生生物。さっきのヒルデベアよりもやっかいな連中だよ」
「そ、そんなのもいるの!?」
ソラが驚きの声を上げる。
「そんな依頼受けたらどうしよう……」
「私達じゃ……ねぇ……」
カエデとエアも心配そうに顔を見合わせる。
「大丈夫だよ。ギルドだってあなた達のレベルでそんな連中がいる地区に送ることはしないから」
「「「よかったぁ」」」
顔を見合わせ安心する3人。
ナツキはそんな3人の様子をほほえましく感じていた。
するとカエデがナツキに何かを期待するような目を向ける。
「ところでナツキさん達は何の依頼なんですか?」
「私も聞きた〜い」
「あんた達ねぇ……」
そんな好奇心旺盛な二人にナツキは少し呆れる。
「守秘義務って言葉知ってる?」
「「え?」」
互いに顔を見合わせるカエデとエア。
その様子にさすがのソラも呆れた。
「この二人、全然分かってないみたい……」
「はぁ……」
ナツキは深い溜め息をついた。
「さっきもカエデが自分たちの依頼内容をしゃべったから注意しようと思ってたんだけど、私達はクライアントから依頼を受けて活動しているのは分かるよね」
「「うん」」
「その受けた依頼内容を他に話すと言うのがどういう事か……それはクライアントとの信用問題に関わることなの」
「そうなんですか?」
「そうなんですかって、あんたの頭に入ってるAIはどこかおかしいんじゃないの!」
”ぱっこ〜〜〜ん!!”
どこからともなく取り出したハリセンでカエデの頭を叩く。
「うう……いたい……」
「痛いじゃない」
ナツキはハリセンを肩に担ぎ、カエデをジト目で見る。
「で、エアは分かるよね」
視線をカエデからエアへ移す。
突然(でもないが)振られたエアは目を泳がしながら何とか考えをまとめようとした。
「えっと……私達の受ける依頼は時として公に出来ない物もあって、それを他人の漏らしてそれが原因で公になった場合、クライアントが非常に困ることになってしまう危険性があるから……ですか?」
やや上目遣いで言う。
「……ま、いいでしょう……とにもかくにもそういうこと」
「「はい」」
元気良く返事をする二人にナツキは……。
(返事はいんだけどねぇ……)
と思った。
「そう言えば、さっき軍人さんを見ましたよ」
突然、カエデが思い出したように言う。
「「軍人?」」
ナツキとソラが声をそろえてカエデに聞き返した。
「う、うん……ねぇエア」
「私も見ました。まるで何かを探しているようでした」
「何人ぐらいいた?」
「えっと……20人ぐらい……かな?」
「あと全員、武装してました」
「そうそう、私達の姿を見た途端、銃を突きつけてね」
「すぐに舌打ちして行ってしまったんですが……さすがに驚いたよね」
「うんうん」
二人はその時の事を思い出しながら話し合う。
ナツキとソラは二人の会話を聞きながら、二人には聞こえない程度の声で話し始めた。
「どう思います?」
「たぶん、私達よりも先に捕まえて自分たちがいかに優秀かを示したいと言ったところでしょ」
「それで役に立たないような情報しか渡さなかったと……」
「恐らくね」
「随分と姑息ですね」
「半年前の汚点を拭いたいんでしょ」
「と言うことは……」
「あの中年ハゲ豚親父め……」
二人は現在ハルカが相手をしているカルフォーネを思い浮かべた。
今頃、彼はくしゃみをしていることだろう。
「あ……あの」
エアがおずおずと声を掛けてきた。
「「ん?」」
「ご、ごめんなさい! 大切な話をしている最中なんですよね」
エアは慌てて頭を下げズズッと後ろに控えるカエデの元に戻った。
「あの娘達何を怯えているでしょう?」
「さぁ?」
二人の異常な怯え方に首を傾げるナツキとソラであった。
「別に怒ってないけど……二人ともどうしたの?」
ソラが二人に尋ねた。
「なんか向こうの方で戦闘があるみたいだから……」
「「え!?」」
カエデが指さす方向……現在行方不明のパイオニア1の人々が建造したセントラルドームの方でテクニックによる爆発の光が見えた。そして遅れて爆発音。
距離があるために銃撃の音までは聞こえてこないようだ。
「あれはラフォイエ……ソラ!!」
「うん!」
「あ、あの……」
何か言おうとするカエデにナツキは口早に言う。
「あなた達は依頼が終わったんだから早めにパイオニア2に戻るんだよ」
そしてナツキとソラはドームへと走り出した。
あっと言う間二人の姿が見えなくなり、その場に取り残されたカエデとエアは顔を見合わせる。
「どうしようか、エア……」
「ナツキさんの言うとおり帰るべき何だろうけど……」
「付いていってみる?」
「でも後で怒られるよ」
「でもエアも行きたいんでしょ」
「うん」
「では」
「では」
「「れっつご〜!!」」
二人はナツキ達にばれないように後を付いていくことにした。
<あとがき>
絵夢「いよいよ物語も佳境に入り始めました」
恵理「えっとカエデちゃんとエアちゃんって天然?」
絵夢「その通りかも」
恵理「やっぱり……あと思ったんだけどこのナツキってすごく口が悪い?」
絵夢「結構悪いかも、嫌いな人に対しては徹底的に言うからね」
恵理「敵に回すとやっかいなタイプなのね」
絵夢「そうだね〜(^^)」
恵理「あはは……」
絵夢「であ次回第五話、ターゲットの正体が明らかに……なるかな?」
恵理「おいおい(^^;」
絵夢「予定は未定! というわけで次回まで」
恵理「いい加減だなぁ お楽しみに〜」
絵夢&恵理「まったね〜」