NOVEL



ここは夢園荘AfterStory
Fragment Age

プロローグ2 <まなみ I>


私は駅前で大きな荷物を足下に置いて、木陰のベンチに座っている。
別に家出というわけでなく、これから夢園荘で1人暮らしを始めるためにここにいた。

私の名前は椿まなみ。
前の名字は桜だったんだけど、2年前お母さんが再婚をしたので椿になった。
相手はお母さんが会社で一緒に仕事をしている椿敏也さん。
3年前に紹介された時、なんとなくいい人っぽいなぁっと思った。
その時のお母さんの反応もまんざらじゃなかったからもしかしたらと思っていたら、案の定結婚。
そこまで辿り着くまでになんかいろいろとあったみたいだけど、ゴールしちゃえばOKだと思う。
私も敏也さんのことはすぐに「お父さん」と呼べたし、成長した証拠かな(^^)
それから親子3人の生活が始まった。

だけどこの夏、テレビの仕事をしているお父さんは長期取材と言うことで数年間、アメリカに行くことになった。
お母さんはお父さんを一人で行かせたくないと言う気持ちと、私を一人残して行けないと言う気持ちでノイローゼになりかかった。
だから私はお母さんに「お父さんと一緒に行って良いよ。私は夢園荘で暮らすから」と言った。
水瀬家に行くと言わなかったのは睦月お姉ちゃんから色々と聞いていたから……。
お母さんは私の言葉にしばらく悩んだみたいだったけど、お父さんと相談して一緒に行くと言うことで結論を出したみたい。

そして私はここで迎えを待っているわけだけど……。
「道を知らないわけじゃないんだから迎えなんかいらないと思うんだけどなぁ……」
麦わら帽子を被り日陰にいるとは言え、この暑さは半端じゃないかも。
「それにしても迎えに来るなら来るでちゃんと時間通りに来て欲しい……」
左腕の時計を見ながら文句を言う。
待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。
にもかかわらず誰も来ない……。
大きな荷物を傍らにぼ〜としている私……
「家出少女と間違われて補導なんかされたらどうしよう」
「良かったぁ、まなみちゃんが補導される前に着いて」
思わず出てしまった声に、答える女性の声。
そちらを向くとセミロングヘアの女性が息を切らしていた。
「恵理お姉ちゃん、遅い」
「ごめんね、まなみちゃん。子供達がなかなか寝てくれなくて、結局暇そうにしてたみなもちゃんに任せて来ちゃったの」
「はぁ……」
恵理お姉ちゃんは照れながら笑う。
この表情を見るととても二児の母親とは思えない。
どう見ても10代……本人には悪いけど高校生か中学生にしか見えない。
私がそう思いながら恵理お姉ちゃんの顔を見てると、突然いじけだした。
「……前、中学生に間違われて補導されたことがあるの……わたしってそんなに幼いかなぁ」
「幼いって言うか……恵理お姉ちゃんって可愛いから……」
そう言えば恵理お姉ちゃんって人の心が読めたんだっけ……。
「そんなの読めないよぉ」
本当に子供っぽく口を尖らして抗議する。
「あはは……」
……これは笑って誤魔化すしかないかも。

それからノルンで少し休憩してからタクシーで夢園荘へを向かった。


着いて案内された202号室。
ここが私が新しい生活を始める場所。
睦月お姉ちゃんも夢園荘で暮らし始めたことは知っていたけど、まさか隣の201号室とは思わなかった……。



→ NEXT


<あとがき>
絵夢「もう一人の主人公椿まなみです」
恵理「なんか、まなみちゃんって平穏な生活とは遠いところにいる娘だね」
絵夢「まぁこれも運命と言うことで、仕方ないっしょ」
恵理「いや、書いてるのマスターだし……」
絵夢「Fragment Ageはこの二人を中心に物語を進めていく予定です」
恵理「なんか誤魔化してる……」
絵夢「恵理はもちろんだけど、今回名前だけだけどみなもも登場します。他にもいろいろと……今は内緒〜」
恵理「考えてないとか?」
絵夢「それはない。まぁ登場させるかどうか不明な奴は多いけど(笑)」
恵理「なるほど……その中に恵理ちゃんは……」
絵夢「今回ちゃんと登場してるけど」
恵理「いや〜これからはどうかなぁって……」
絵夢「大丈夫、というか一応メインの一人だし」
恵理「なら安心(^^)」

絵夢「そういうわけで次回まで」
恵理「お楽しみに〜」