ファンタシースターオンライン
『未来へのプロローグ』
第三話 「それは人それぞれ……って奴かな?」
舗装されていない土がむき出しになった道をナツキとソラはテクテクと歩いていく。
道の両脇にはたくさんの花が白や黄色や青など色様々に咲き誇っている。
その周囲を蝶を初めとした小さな虫たちが蜜を求めが飛び交う。
エネミーの存在さえなければ平和その物と言っても過言ではない。
少なくともナツキは当たりの様子をうかがいながらそう思っていた。
「あの……ナツキさん?」
ソラはおずおずとナツキを呼んだ。
「ん?」
ナツキは足を止めソラを見た。
「ずっと聞きたいと思っていたことがあるんですが、いいですか?」
「いいよ、なに?」
「さっきもそうだったんですがどうして右目が金色になるんですか?」
「え?」
その質問にナツキは無表情な口調で反応した。
そんな彼女の反応に聞いてはいけないことを聞いてしまったとソラは慌てて頭を下げた。
「あ……ごめんなさい」
「別に謝らなくても良いのに……」
ナツキは苦笑を漏らした。
「怒ってないですか?」
「なんで?」
「でも今……」
「ごめんね。まさか右目のことを聞かれると思わなかったから……話してなかったっけ?」
「はい」
「そっか……出会ってもう1年近くなるのに話してなかったんだ……」
ナツキは腕を組みう〜んと考える仕草をする。
「私も今まで聞かなったから……」
「なるほど……私も聞かれないことを話すことはしないからね」
「そうですよね。そのわりにどうでも良いことはどんどんはな……」
”ガチャ”
ソラの鼻先にハンドガンの銃口。
「な、ナツキさん……」
「お、いつの間に」
左手の中のハンドガンを見てとぼけながら、腰のリボンに収納する。
「う〜ナツキさ〜ん」
ソラは涙目で抗議する。
「あはは、冗談だって」
「もう良いです……馴れましたから……」
そう言うと深く溜め息をついた。
ナツキは話題を変えないといけないなぁと思い、右目の話を持ち出すことにした。
「で、右目の事なんだけど……」
「……はい」
まだ機嫌が直っていない感じだがナツキは気にせず話すことにした。
「この中にはターゲットスコープと赤外線センサーや対物センサーなどのセンサー類が組み込まれてて、それを作動させると金色に光るの。
それがどういう仕組みかは分からないけど、レンジャーの私にとってすごく重要なパーツ。
たぶんこの目が無かったら百発百中とはいかないと思うよ」
やや自慢げに自分の右目を指しながら説明した。
「はぁ……そうなんですか」
ソラは素直に感心していた。
「でも普段は左目と同じ紫ですよね」
「それはそうだよ。普通に生活しててスコープやセンサーは必要無いでしょ」
「あ、そうか」
「それに目視距離10m以内なら使わなくても当たるし」
「さすがナツキさんですね」
「ありがと」
そこでソラがふと考え込んだ。
「でもナツキさんの右目みたいな装備、他のレンジャーさんでは見たこと無いかも。
だって、レイマーさんは別として、レイキャストさんや他のレイキャシールさんはスコープのような物は普通両目に装備されてるんですよね」
「え……っと、そうみたいだけど……」
「ナツキさんは片目だけなんですよね」
ソラは首を傾げながら言う。
「それは……」
ナツキはそこで言葉を詰まらせた。
珍しく言葉を詰まらせる彼女にソラは心配そうに顔をのぞき込んだ。
「ナツキさん?」
「それは人それぞれ……って奴かな?」
曖昧な答え。
「なるほど」
だが、ソラはポンッと手を叩きながら納得した。
「私の話はここまでにして先に進もうか」
ナツキはこれ以上突っ込まれたくないらしく話を逸らすことにした。
「はい」
そしてソラもそれに従った。
パイオニア2内にある軍施設。
その中にある応接室でハルカは出されたお茶にも手を付けずジッと待っていた。
(ここまですんなり入れるとは思っていなかったけど……)
目だけを動かして部屋を観察する。
(あちらこちらに隠しカメラか……恐らく盗聴の類もあるんでしょうね……)
口の端を歪ませ笑う。
(私が気づかないとでも思っているのか……それともバカにされているのか……)
軽く溜め息をつき、背もたれに背を預ける。
「恐らく後者だな」
ハルカはつぶやくように口に出し苦笑した。
ハンターズギルドと軍は非常に仲が悪い。
それは市民の知るところでもある。
軍から見れば好き勝手やるハンターズが気にくわないし、ハンターズから見れば仕事の邪魔をする連中と言うことで、毎日のように個人レベルで何かしらの小さないざこざがあるようだ。
しかし、その間に政府が立つことで何とか大事にならずにすんでいると言ったところだろう。
そして半年程前、軍からギルドへ合同訓練の話が持ちかけられた。
その真の目的は軍の力を見せつけハンターズにこれ以上大きな顔をさせないと言うことであった。
しかし結果はたった一人のレイキャシールによって動員した人員の約半数を病院送りにされると言う散々なものであった。
(そのレイキャシールも約半月ほどメンテナンスルームに強制入院することになった。その理由は駆動系パーツの総交換)
軍はギルドにこのことを市民には知らせないよう懇願し、合同訓練その物を無かったことになった。
ちなみにその時のギルド側の責任者としてハルカがその任を請け負っていた。
ハルカが物思いに耽ているとドアが開き、腹が出始めている中年男性が入ってきた。
彼女は一瞬イヤな顔をしたが、すぐに真顔に戻ると立ち上がり男を出迎えた。
「これはこれはフローラ総合管理室室長殿。今日は一体どういう用事ですかな?」
男はいかに人を小馬鹿にしたような言い回しをする。
「お久しぶりですねカルフォーネ 小尉 殿。あの時以来でしょうか」
ハルカも遠回しな嫌みで返す。
このカルフォーネが先の合同訓練の軍側の責任者であった。
しかしその時の失敗から責任取らされて小尉に降格することになった。
そして今回ギルドへの依頼も彼の名前で為されていたこともありハルカは彼を呼びだしたのだ。
「ぐ……そうですな」
こめかみに青筋を浮かべながら笑顔で答える。
「で、用事とは一体なんでしょうか」
「いえ、そちらからの依頼の件で2、3聞きたいことがありまして伺いました」
「ほぉ一体どういう事でしょうか」
カルフォーネはハルカの向かいに座りながら言う。
ハルカもそれにならい再び座る。
「そちらから送られてきた犯人の情報です」
「ふむ、それが何か?」
「依頼書に明記された犯人の特徴が『黒ずくめの女性ニューマン』とだけしかない。
これだけでは我々としても探しようがありません」
「しかし、こちらとしてもそれだけしか情報がありませんからな」
「つまり、凶悪犯と言うことが分かっているにもかかわらず、そんな曖昧な情報しかないと……確かにゲートを素通りさせるわけですね」
「我らを馬鹿にするつもりか!?」
「ですがゲートを通しラグオルに逃亡させたのも事実では?」
「くっ!」
「それに凶悪犯と言っているにも関わらず名前すら分からないと言うのはどういう事でしょうか?」
「こちらでも分からんからだ」
「しかしコードネームや俗称ぐらいはあるのでは?」
「そんな物もない。第一犯人に名前など必要あるまい」
カルフォーネはハルカを睨み付ける。
だがハルカもひるまずじっと相手を見据える。
そして互いの腹のさぐり合いはさらに続いていく。
遙かにハルカの方が有利だが……。
突然、ナツキが歩みを止め当たりを探るように見回す。
「ソラ……遠くの方で声が聞こえない?」
「え?」
その言葉に耳を澄ます。
「聞こえませんが……」
「空耳かな?」
「空耳って……」
ソラは若干呆れた風に言う。
しかしナツキはジッと耳を澄ましている。
「いや……違う……」
「……ナツキさん?」
「あっち!!」
ナツキは重いはずのショットを軽々と右の小脇抱えたまま突然走り出した。
「ちょ、ちょっとナツキさ〜〜ん!!」
慌ててソラも置いて行かれないように後を追いかけていった。
<あとがき>
絵夢「ようやく本題に……まだ入れない(涙)」
恵理「相変わらずですね〜」
絵夢「仕方ないよ、のんびりやってるんだから」
恵理「次当たりから本題に入れるの?」
絵夢「ん〜どっかな?」
恵理「おいおい」
絵夢「であまた次回まで」
恵理「ってあとがきってもうお終いなの!?」
絵夢「うん、だってネタ無いもん」
恵理「う〜〜〜〜」
絵夢「そんなわけで次回までお楽しみに〜」
恵理「ちょ、ちょっとぉぉ」
絵夢「まったね〜」
恵理「あぁぁぁぁぁ」
恵理「酷いよマスターぁ」(涙)